2010年12月2日木曜日

家族のしるし

小さい時、

年子のお姉ちゃんの目の下には、

いちご状血管腫という

赤いほくろのようなものがあった。



今になってその赤いほくろの本当の名前を知ったけど、

小さかった私にとってそれは「赤ぼくろ」だった。



私には黒いほくろしかないのに、

お姉ちゃんはすごいなと、感心していた。



だけどその赤ぼくろは、

おばぁちゃんにも、お母さんにも小さい時にあったという。



それを聞いた私は、生まれてきて初めて

すごく大きな不安を感じた。



私だけその赤ぼくろがなかったからだ。



目をこらして体中を探した。



私は必死だった。



だって赤ぼくろは、うちの家族のしるしだったから。



けれど、私にはそのしるしがなかったのだ。



赤の油性ペンで私は赤ぼくろを書いた。

書いては消え、消えては書いて。





お姉ちゃんの赤ぼくろは、

歳を重ねるほど薄くなり消えた。



私の不安も同じように消えて、

赤ぼくろがなくなった頃には、そんな不安も忘れていた。





��歳になって、妹が生まれた。

生まれた妹の肩にはまた赤いほくろがあった。



私はあの不安を思い出し、少しだけ笑えた。

私は少し大人になっていた。







昨日、おばぁちゃん家で湯船に浸かっていたら

右胸の上に今までなかったなにかが肌にできていた。



それは紛れもなく赤ぼくろだった。



家族だという証をもらえたような気がした。



少し泣いて、少し笑った。



私はまだ、子供だった。

1 件のコメント:

かいら さんのコメント...

遺伝子って受け継がれますよね(*_*)
私にもあります!
耳のある部分に小さな穴。
みんなにみせると宇宙人といわれてたな(●^ー^●)