小さい頃から、
タバコの匂いに落ち着く気がしていた。
親はヘビースモーカーで、
私はその匂いの元で育ったからだろう。
おばぁちゃんは大の禁煙家で、
うちの母へいつも口うるさく禁煙を訴えていた。
幼いながら、「好きにさせてあげればいいのに」と思っていた。
高校のとき、
はじめて本気で好きになった人がいた。
彼は喫煙者だったけど、
私に禁煙すると宣言した。
私はなんの疑いもなく、
辞めるのだと思っていたし、
なんだかその宣言が、
愛情のようにも感じて嬉しかった。
けれど彼は
私の知らないところで吸っていたし、
私も匂いで気づいてしまった。
タバコなんていくらでも吸ってくれと思った。
たかがタバコの嘘が、
幼く、純粋だった私にはあまりにも痛かった。
私が18の頃、
母が40歳になったら禁煙すると宣言した。
母は、「筋を通す」ことを
信念に持ってる人だったから、
母が辞めるって言ったら
きっと本当に辞めるんだろうと思っていた。
��0の誕生日には禁煙グッズをプレゼントした。
けれど母は三日も持たなかった。
堂々と言い訳をして私の前で吸い続けた。
そんな風に
人が禁煙を失敗する度に、
胸のどこかが冷えていくのを感じてた。
私はタバコを吸う事を悪いとは思っていない。
きっと音楽や、宗教と変わらない。
それが必要なら、
多分誰がなんと言おうと必要だから。
私だって分からずやではないつもりだ。
私にだってどうしても必要なものがある。
たまたまタバコは吸っていないだけのことだ。
分かってる。
けれど今は、タバコの匂いが
私の傷に触れていくのは確かだ。
きっと私は愛を持っても
太刀打ちできない人間の弱さに
悲しくなってしまうのだ。
何も悲しいことではないはずなのに。
人はとても不安定なもの。
バランスを整える為に
必要なものがあるだけのこと。
愛だけで人は救えないのだろう。
タバコの匂いが
いつまでも私について離れない。
「愛だけでは救えない」
と語りかけるように
1 件のコメント:
やめてっていって自分は吸う。
なんか複雑ですよね。
かくれて吸われたらショックだなぁ(>_<)
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